アクセス 国際感染症センター

ペスト

ペストとは?

ペストは、Yersinia pestisによる動物媒介性感染症で、ノミの吸血により感染する腺ペスト、感染者・げっ歯類から飛沫感染する肺ペスト、これらから進展するペスト敗血症に分類されます。肺ペストは感染性が高く、ヒト-ヒト感染をするので注意が必要です。

感染症法で1類感染症に指定されており、疑い例を含め保健所へ直ちに報告する義務があります。

ペストの流行状況は?

2000年以降も世界的に散発がみられており、特にマダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルー、アメリカ合衆国では毎年発生報告があります。

2010年~2015年には世界で3248人の患者が報告され、548人が死亡しています。

マダガスカルでは山岳部で恒常的に腺ペストの発生が見られていましたが、今回2017年8月以降に首都アンタナナリボを含めた都市部での肺ペスト患者の増加が見られており、10月8日までに肺ペスト患者227人、腺ペスト患者106人、ペスト敗血症1人の発生が確認され、45人が死亡しています。

日本では、感染症法の1類感染症に指定された1999年から現在まで、海外からの輸入例の報告はありませんが、明治から昭和初期には散発例の発生がありました。

ペストの症状は?

通常は曝露してから1-7日の潜伏期間の後に高熱、頭痛、嘔吐等の症状が出現します。

肺ペストは腺ペストに比較して潜伏期が短く、急激に進行する呼吸困難、血痰等の呼吸器症状が急激に進行します。ペスト全体に対する割合は数%とされています。2017年にマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペスト患者がより多くの割合で報告されています。

腺ペストはノミに刺された部位の所属リンパ節の腫大と疼痛が出現し、高熱や皮疹が出現します。ペストの80~90%を占めるといわれています。

いずれも敗血症を起こし全身の出血斑、壊死が出現します。数日~1週間程度で致死的になります。ペスト全体の10%程度が敗血症に至るとされています。

ペストの鑑別診断は?

肺ペストは類鼻疽、一般細菌性の重症肺炎などが鑑別になります。

腺ペストは野兎病、細菌性リンパ節炎、猫ひっかき病、リケッチア症などが鑑別になります。

ペストの診断は?

血液、リンパ節、喀痰、病理組織などそれぞれの病態に応じた感染臓器からの分離同定、蛍光抗体法での抗原検出、PCRによる遺伝子検出等による病原体検出が確定診断となります。

検体の取り扱いについては保健所の指示に従う必要があります。

ペスト発生時の対応・治療は?

1類感染症に指定されているため、疑い例の時点で即時に保健所への報告が義務付けられています。また、特定感染症指定医療機関、第1種感染症指定医療機関で診療する必要性があるため、保健所の指示に従い患者の移送を行います。

治療は抗菌薬を用います。急激な経過をたどるため、早期診断・早期治療が必要です。

ペストの予防は?

ペストには有効なワクチンがありません。

発生国ではネズミなどのげっ歯類、ノミ、ペストの可能性のある患者・死体に接しないことが大切です。

肺ペスト患者からは飛沫感染をするので、サージカルマスクの着用が有用です。

参考文献

ファクトシート ダウンロード

重要なお知らせ

「エムポックス 診療の手引き 第2.0版」ページを更新しました。

ページはこちら

「カンジダ・アウリスの臨床・院内感染対策マニュアル」ページを公開しました。

ページはこちら

これまでの実績

2024年3月
マラリアのマネージメント(ナイジェリアからの渡航者)
2024年3月
侵襲性髄膜炎の医療従事者の曝露後予防
2024年2月
ケフレックス供給制限に伴う内服抗菌薬
ページのトップへ戻る