アクセス 国際感染症センター

炭疽(Anthrax)

概要

グラム陽性桿菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)による全身感染症であり、感染経路、発症様式から大きく肺炭疽、皮膚炭疽、腸炭疽などに分かれる。

症状

病型ごとに異なり、肺炭疽は感冒様症状、頭痛、筋肉痛、呼吸困難などで発症し半数は髄膜炎を合併する。皮膚炭疽は虫刺され様の初期病変の後に無痛性・非化膿性の膿疱の出現、所属リンパ管炎やリンパ節炎を呈する。腸炭疽は嘔気嘔吐、腹痛、下痢、吐血、血便などで発症する。口咽頭感染の場合は咽頭炎や嚥下障害も合併する。

感染経路

炭疽は家畜に起こる疾患であり人畜共通感染症である。家畜や土壌中の菌を介して感染する。患者に多くは家畜あるいはその加工品を扱う職種であるが、環境中での芽胞の安定性と致死的効果から兵器として開発された歴史がある。このためバイオテロリズムで使用される可能性がある菌の一つである。

感染対策

炭疽菌感染症疑い、もしくは確定患者に対しては標準予防策+接触予防策を行う。皮膚炭疽では病変部の接触感染の報告があるためグローブを必ず着用する。

全身症状のある炭疽で抗菌薬投与前、あるいは治療開始直後に侵襲的な処置を行う場合、full PPEを着用する。

肺炭疽のヒトヒト感染事例の報告はなく、基本的に空気感染は起こさない.しかし、実際には他の伝染性のある感染症の可能性もあるので、肺炭疽であることが確定するまでは、個室管理下に標準予防策および接触予防策を行い、可能な限り陰圧管理・N95マスク対応を行う.肺炭疽と確定すれば陰圧管理・ N95マスクは原則として不要である。

新感染症病棟開棟基準

未知の感染症マニュアルに準ずる

隔離解除

肺炭疽と確定すれば陰圧管理・ N95マスク対応は終了可能であるが、その判断は慎重に行う。

診断

確定診断は血液、髄液、喀痰、皮膚病変、糞便などの臨床検体からのB.anthracisの検出である。臨床検体及び環境検体であっても、”カテゴリー A”として取り扱い、移送の際にはカテゴリーAに対応した、包装容器を用いた三重梱包とする。本邦における炭疽のBSLレベルは3である(米国と異なる点に注意)

治療

病型に応じて大別され、特に髄膜炎の合併の有無により治療で用いる抗菌薬が異なる。全身症状を伴う場合、禁忌がない限り腰椎穿刺により髄膜炎合併の有無を評価すべきである。腰椎穿刺検査等でも髄膜炎が否定しきれない場合には、髄膜炎があるものとして治療する.抗菌活性があり中枢神経移行性の良い少なくとも3剤(3剤のうち1剤は蛋白合成阻害剤)で治療する。 治療レジメンは付録を参照のこと。

予防内服

バイオテロリズムの炭疽菌感染症は、エアロゾルの曝露による肺炭疽を呈することが多く致命率が高いため、炭疽菌エアロゾルを曝露した者に対しては抗菌薬による予防内服を行うべきである。

除染

除染については別記「除染マニュアル」に準ずる

保健所への届出

感染症法に基づく4類疾患として、診断した際は直ちに保健所に報告する義務がある。

付録 治療および予防内服のレジメンについて

治療レジメン

推奨レジメン

髄膜炎を伴う炭疽菌感染症
 シプロフロキサシン 1回400mg 1日3回静注 プラス
 メロペネム 1回2g 1日3回静注 プラス
 リネゾリド 1回600mg 1日2回 静注

髄膜炎を伴わない肺炭疽・腸炭疽、全身症状を伴う皮膚炭疽
 シプロフロキサシン 1回400mg 1日3回静注 プラス
 クリンダマイシン 1回900mgg 1日3回静注 プラス
 もしくは
 リネゾリド 1回600mg 1日2回 静注

全身症状を伴わない皮膚炭疽
 ①シプロフロキサシン 500mg 1日2回内服
 もしくは
 ②ドキシサイクリン 100mg 1日2回内服

予防レジメン

①シプロフロキサシン 500mg 1日2回内服(小児は30mg/kg/日(上限500mg/回) 1日2回内服)
②ドキシサイクリン 100mg 1日2回内服(体重45kg以下の小児は2.2mg/kg 1日2回内服)

感受性が判明した場合は単剤への切り替えを検討する
60日間内服する

※米国には炭疽菌に対するワクチン、炭疽菌毒素に対するモノクローナル抗体が存在するが日本では利用可能ではない

参考文献

マニュアル ダウンロード

診療マニュアル

重要なお知らせ

2019年7月現在、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱がアウトブレイクしています。国際感染症センターはエボラ出血熱 2019(コンゴ民主共和国)に関するファクトシートを作成しました。

ダウンロードはこちら

これまでの実績

2018年2月
タイ帰国後の重症肺炎、マラリア、メリオイドーシス疑い
2018年2月
PPE着脱の指導
2018年2月
コンゴ民帰国後の発熱、マラリア検査希望
ページのトップへ戻る