アクセス 国際感染症センター

エボラ出血熱 2019(コンゴ民主共和国)

エボラ出血熱とは?

フィロウイルス科エボラウイルス属の5種のウイルスによる感染症の総称です。オオコウモリが自然宿主とされ、自然界では野生動物間での感染サイクルがあり、もともとサルなどに感染していたと考えられていました。狩りや食生活を経由してヒトに感染するようになったといわれています。重篤で致死率も高く、治療や感染経路もわかっていないことが多いことから、未解明な点が多い疾患です。

エボラウイルスによる感染症は本邦では長くエボラ出血熱と呼ばれてきましたが、実際には出血が必発ではないことから国際的にはエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼ばれています。

エボラ出血熱の流行状況は?

1976年にコンゴ民主共和国で1例目が報告されてからは局所的な流行にとどまっていましたが、2014年に西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネで流行し、28000人以上の感染者と11000人以上の死者を出し、2016年に終息しました。このとき日本国内では9例の疑似症が発生しましたが、確定例は発生しませんでした。

2014年以降も散発的にコンゴ民主共和国内で発生し、2018年8月から現在までコンゴ民主共和国北東部を中心に流行が続いています。2018年以降のコンゴ民主共和国での流行においては、国外への患者流出は2019年6月のウガンダ共和国での1例のみです。しかしルワンダとの国境に近い、コンゴ民主共和国東部の都市Gomaなどでも流行が見られており、2019年7月18日にWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC)」に該当する旨を宣言しました。

エボラ出血熱の症状は?

通常2-21日の潜伏期ののち、発熱、筋肉痛、頭痛などが出現し、その後下痢、嘔吐、発疹などが出現します。

血液検査では白血球や血小板の低下、肝機能障害が見られます。

以前は出血熱の名の通り重篤な出血症状が問題となるといわれていました。しかし出血症状の頻度は10%程度であったとする報告もあり、現在では治療や感染管理の点からも下痢、嘔吐などの消化管症状に注意が必要とされています。肝臓でウイルスが増殖するため、右季肋部の圧痛や叩打痛が見られることがあります。

エボラ出血熱の鑑別診断は?

急性の発熱疾患であり、流行地が重なることからもマラリアは重要な鑑別疾患です。また、インフルエンザや急性胃腸炎などの一般的な疾患、デング熱やジカ熱などの熱帯特有の疾患も鑑別となります。

また、アフリカではマールブルグ病、ラッサ熱などのその他のウイルス性出血熱の報告もあるため、注意が必要です。

エボラ出血熱の診断は?

血液、尿、咽頭ぬぐい液からのウイルスの同定、ELISA法による抗原の検出、PCR法による遺伝子の検出をもって診断が確定します。しかしいずれも通常の検査室での取り扱いはできず、国立感染症研究所で検査が行われます。

病歴、症状からエボラウイルス病が疑われた際は保健所への届け出を行った後に診断のための検査が行われます。

エボラ出血熱発生時の対応・治療は?

1類感染症に指定されているため、疑い例となった時点で、即時の保健所への報告が義務受けられています。また、特定感染症指定医療機関、第1種感染症指定医療機関で診療する必要性があるため、保健所の指示に従い患者の移送を行います。

指定医療機関で感染対策を講じたうえで、抗ウイルス薬の投与と輸液などの支持療法を行います。治療薬としてファビピラビル(アビガン®)やZmappが使用された経験がありますが、いまだ情報は乏しく、また国内での承認医薬品はありません。

病原性が高いこと、体液を介した感染が想定されるも、それ以上の明確な感染経路が不明であることから、N95マスク、つなぎ状の防護服、エプロン、二重手袋などを併用した個人防護具の完備が望ましく、必要に応じて電動ファン付き呼吸用保護具(Powered Air-Purifying Respirator: PAPR)を使用することも検討されます。

参考文献

ファクトシート ダウンロード

重要なお知らせ

「エムポックス 診療の手引き 第1.0版」ページを公開しました。

ページはこちら

「カンジダ・アウリスの臨床・院内感染対策マニュアル」ページを公開しました。

ページはこちら

これまでの実績

2023年11月
行政機関のHPの性感染症の確認
2023年10月
インフルエンザ患者もしくインフルエンザ様患者におけるエアロゾル発生処置時の感染対策
2023年10月
梅毒のマネージメント(治療歴のないRRR陰性・TPHA陽性)
ページのトップへ戻る