黄熱
黄熱とは?
黄熱(黄熱病)は、黄熱ウイルスによる蚊媒介性感染症で、主にネッタイシマカに媒介されます。人から人へ直接感染しません。
2016年5月現在、サハラ以南アフリカと南アメリカにおいて47の流行国があり、毎年、約90%の症例がサハラ以南アフリカより報告されています。
2015年12月からアンゴラで流行が確認され、4月7日までに合計1708例の疑い例、うち死亡数238例(致命率:13.9%)が報告されています。なお、中国、ケニア、コンゴ民主共和国では、アンゴラからの輸入例が確認されています。
日本では、感染症法の4類感染症に指定された1999年から現在まで、海外からの輸入例の報告はありません。
黄熱の症状は?
感染した場合、全員が発症するわけではなく、無症候の場合もあります。
通常はウイルスに曝露してから3-6日の潜伏期間の後に頭痛、発熱、筋肉痛、嘔吐などの非特異的な症状が出ます。
多くの人は症状発現から3-4日後に回復しますが、一部の人は重症化します。
重症化すると、複数の臓器から出血や黄疸を起こし、流行地の致命率は約50%にも及びます。
黄熱の鑑別診断は?
同じ蚊媒介感染症であるマラリア、デング熱、チクングニア熱に注意が必要です。
その他の輸入感染症である腸チフス、レプトスピラ症、リケッチア症、その他のウイルス性出血熱(マールブルク病など)や、その他はウイルス性肝炎も鑑別診断に挙がります。
黄熱の診断は?
ウイルスの遺伝子または抗体(IgM抗体やペア血性による中和抗体)を検出することで診断します。遺伝子の検出にはPCR法が用いられます。・発症から3日以内に採取された血液検体から最もよくウイルス分離されます。
黄熱の治療は?
有効な治療薬はありません。輸液や、頭痛や発熱などに対する対症療法を行います。
重症例で集中治療が必要になることがあります。
黄熱の予防は?
黄熱には有効なワクチンがあり、1回の接種で接種後10日目から生涯有効であるとされます。
高齢者や免疫に異常のある方ではワクチンの副作用(頭痛、筋肉痛、微熱など)が起こりやすくなるので注意が必要です。
出入国の際に黄熱ワクチンの接種証明書の提示を求められることがあります。黄熱の流行地域に渡航する際は事前に接種証明書が必要かどうか確認しましょう。
黄熱の流行地域では蚊に咬まれないことも重要です。ディートを含む虫よけをこまめに使用する、服装はできるだけ皮膚の露出の少ないものにする、寝るときは蚊帳を使うなど、防蚊対策を心がけましょう。
黄熱に感染する危険がある国(FORTHより)
アフリカ地域
アンゴラ、ウガンダ、エチオピア、カメルーン、ガーナ、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、シエラレオネ、南スーダン、セネガル、赤道ギニア、中央アフリカ、チャド、トーゴ、ナイジェリア、ニジェール、ブルギナファソ、ブルンジ、ベナン、マリ、南スーダン、リベリア、モーリタニア南
アメリカ地域
アルゼンチン、エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム、パナマ、フランス領ギアナ、ブラジル、ペルー、ベネズエラ、ボリビア、トリニダード・トバゴ、パラグアイ
参考文献
- WHO. Yellow fever: Questions and answers
- CDC. Areas with Risk of Yellow Fever Virus Transmission in Africa(Accessed at 2016年5月19日 )
- CDC. Areas with Risk of Yellow Fever Virus Transmission in South America(Accessed at 2016年5月19日)
- WHO. Yellow fever - Angola
- 厚生労働省検疫所 FOTH-黄熱(Accessed at 2016年5月19日)