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ボツリヌス症

概要

ボツリヌス症(botulism)は、ボツリヌス菌 (Clostridium botulinum) が産生するボツリヌス神経毒素 (botulinum neurotoxin)によって起こる神経中毒疾患である。ボツリヌス菌の毒素が、テロリストによって生物兵器として使われる可能性が危惧されている。本邦では四類感染症に指定されている。

症状

ボツリヌス症は、主に

①ボツリヌス食中毒(食餌性ボツリヌス)、
②乳児ボツリヌス、
③症創傷ボツリヌス症、
④成人腸管定着ボツリヌス症

の4つの病型に分類される。最も一般的なのは本症例のようなボツリヌス食中毒である。1歳未満の乳児が菌の芽胞を摂取することにより、腸管内で芽胞が発芽し、産生された毒素の作用によって発症するのが乳児ボツリヌス症であり、ハチミツなどが原因となりうる。

ボツリヌス食中毒では、通常原因となる食事を摂取後12~36時間後に出現する。先行症状として、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状が現れる。その後、複視、眼振、眼瞼下垂、嚥下障害が出現し、体幹から上肢・下肢へと進む筋力低下が現れる。平滑筋麻痺による尿閉や便秘もみられることがある。横隔膜麻痺や気道閉塞により呼吸困難となり人工呼吸管理が必要となることも多い。

感染経路

ボツリヌス菌の芽胞は土壌に広く認められるため、食品に混入することがある。芽胞は熱に強いため、100℃で長時間調理しても死滅させることができない。芽胞が含まれた食品が、真空パック詰食品や缶詰、瓶詰め、発酵食品内などの「嫌気状態」になると、食品内で、芽胞が発芽し、ボツリヌス菌が増え、ボツリヌス毒素が作られる。これを食べると、毒素が腸管で吸収され、ボツリヌス食中毒がひきおこされる。

生物剤として考えた場合、空気中に散布することによって直接的に感染させる方法のほか、水・食料へ混入することで、これらの供給を妨害する目的も考えられる。

感染対策

ヒトからヒトへの感染はない。患者から医療従事者への感染性はなく、標準予防策のみで特別な隔離は必要ない。消毒も特に必要ない。

検査

反復誘発筋電図では著しく小さいM波振幅が典型的である。

診断

診断は、まずボツリヌス症を想起することが重要である。確定診断には血清、便、吐物、あるいは原因と思われる食事からボツリヌス毒素を検出することが必要である。通常、食事摂取後12日間は検出されると言われる

治療

治療にはボツリヌス抗毒素を用いる。本邦では乾燥ボツリヌス抗毒素注射用「化血研」(1瓶684694円)を注射用水20~40mLに溶かして筋肉内(皮下)又は静脈内に注射するか、あるいは生理食塩液等で希釈して点滴静注する。症状が軽減しないときは3~4時間ごとに追加注射する。症創傷ボツリヌス症では抗毒素投与後にペニシリンGなどの抗菌薬も投与する。

保健所への届出

感染症法に基づく四類感染症として、診断した際は直ちに保健所に報告する義務がある。

参考文献

マニュアル ダウンロード

診療マニュアル

重要なお知らせ

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の診療指針」ページを公開しました。

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「エムポックス 診療の手引き 第2.0版」ページを更新しました。

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「カンジダ・アウリスの臨床・院内感染対策マニュアル」ページを公開しました。

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