髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)
概要
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis )はグラム陰性の双球菌で通常ヒトの咽頭に定着し、髄膜炎の原因微生物として重要である。莢膜多糖の種類によって少なくとも13種類のSerogroup(血清群)に分類されているが、髄膜炎菌性感染症の原因菌として分離されるものはほとんどがA、B、C、Y、W-135である。
症状
気道を介して菌血症を起こし、発熱、出血斑、関節炎等の症状が出現する。続いて髄膜炎に進展し、頭痛、吐き気、精神症状、発疹、項部硬直などの主症状を呈する。劇症型の場合には突然発症し、頭痛、発熱、けいれん、意識障害を呈し、DIC(汎発性血管内凝固症候群)を伴い、ショックに陥って死に至ることがある (Waterhouse-Friderichsen症候群)。
感染経路
くしゃみなどにより、ヒトからヒトへ飛沫感染によって伝播する。
感染対策
個室隔離とし、飛沫および接触感染対策を行う (詳細はICTの院内ホームページ12-19参照)。
隔離解除
有効な抗菌薬治療または鼻腔保菌治療から24時間経過した後、鼻腔スワブ培養を提出する。鼻腔スワブ培養の陰性を確認し、感染対策を終了とする (詳細はICTの院内ホームページ12-19参照)。情報は常にICTと共有する。
検査・診断
髄液や血液から分離培養を行い、グラム染色による検鏡及び生化学的性状により髄膜炎菌であることを確定する。血清群型別は型別用の抗血清を用いて、凝集反応の有無によって検査を行う。
治療
第一選択薬はペニシリンGである。また、髄膜炎の初期治療に用いられることのあるセフォタキシムやセフトリアキソンは髄膜炎菌にも優れた抗菌力を発揮する。治療期間の目安は7日間である。
推奨レジメン:
① ペニシリンGカリウム 1200~2400万単位/日を4~6時間ごとに分けて静注
② セフォタキシム2g 4~6時間ごとに静注
③ セフトリアキソン2g 4~6時間ごとに静注
④ シプロフロキサシン 200~400mg 1日2回点滴静注
予防内服
髄膜炎菌に曝露した患者・医療者は、曝露後に抗菌薬の予防内服が必要となることがある。曝露後の予防内服の適応と予防内服に用いる抗菌薬は、ICTの院内ホームページ12-19を参照すること。情報は常にICTと共有する。
保健所への届出
感染症法に基づき、症状や所見から侵襲性髄膜炎菌感染症が疑われ、かつ病原体検査により侵襲性髄膜炎菌感染症と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。特に、患者が学生寮などで共同生活を行っている場合には、早期の対応が望ましい。
参考文献
- Mandel, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
- USAMRIID'S Medical management of biological causalities handbook 8th edition
- NBCテロ対処ハンドブック (診断と治療社)
- IASR Vol.26 p35-36 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis )とは
- 厚生労働省HP 政策について 感染症法に基づく医師及び獣医師の届け出について(2018年3月1日)