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エムポックス 診療の手引き 第3.0版

病原体・疫学

Ⅰ 病原体

 エムポックスは,オルソポックスウイルス属のモンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス:MPXV,以後,エムポックスウイルスと表記)による急性発疹性疾患であり,本邦では4類感染症に位置づけられている 1,2.1970年にヒトでの感染が確認されて以来,アフリカ中央部から西部にかけて発生報告があり, 欧米でも常在地域からの渡航者などでの感染事例が散発的に報告されていたが, 2022年5月以降は主に男性間での性的接触を行う男性(Men who have sex with men: MSM)を中心としたクレードⅡエムポックスウイルスによるエムポックスの国際的な流行が発生した.さらに2023年以降はコンゴ民主共和国(DRC)でクレードIのエムポックスウイルスの流行が報告された.その後DRC東部を中心に家庭内感染,異性間の性交渉などによるクレードI bエムポックスウイルスの流行が発生し,周辺国への拡大が報告されるとともに,欧米やアジアでも流行地からの渡航者での感染例が報告されている.
 クレードIによる感染例の死亡率は10%程度であるのに対し,クレードⅡによる感染例の死亡例は1%程度と報告されている1,2.2022年5月以降の世界的な流行における分離株の多くがクレードⅡのうちクレードⅡbのB.1系統とその亜系統に属している3.これらの株は2018年に英国,イスラエル,シンガポール,ナイジェリアで解析されたウイルスと近縁であり,当時検出されたウイルスから約50塩基の変異がみられたことから,想定されるエムポックスウイルスの変異の速度より速く変異が起こっていることが示唆された.しかし,多くの変異が加わった原因や,変異が流行の動態に影響を与えているかは不明である4

Ⅱ 伝播様式

 エムポックスは,ヒトからヒトへの感染の場合,患者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity),患者が使用した寝具などの媒介物(fomite)により伝播することが知られている.2022年5月以降のクレードⅡエムポックスウイルス感染では,患者の皮膚病変のほか,血液,肛門,咽頭,尿などからエムポックスウイルスが検出され,特に皮膚病変,肛門からの検体がほかの部位と比較してウイルスDNA量が多いことが報告されていた5.また,発症19日後の患者の精液からエムポックスウイルスが分離された報告6や,発症54日後の精液からエムポックスウイルスのDNAが検出された報告などがあり,精液を介した感染の可能性が示唆されている一方で,77例から採取した検体で発症15日後の精液の99%でウイルス培養が陰性であったとの報告もあり7,精液中のウイルスの感染性を有する期間については不明である.その他の部位からも,発症40日後の穿破したリンパ節,54日後と76日後の唾液からエムポックスウイルスのDNAが検出された報告があるが,感染性は不明である8
 発症までの期間が潜伏期間より短いと推定される症例があることから,発症前のエムポックス患者から感染伝播する可能性が示唆されている9
 2022年5月以降のクレードⅡエムポックスウイルス感染では,症例の多くは男性であり,男性間で性交渉を行う者(Men who have Sex with Men:MSM)が多く含まれていることが各国から報告されている.性別情報が得られた症例のうち,96.4% (84,735/87,899例)は男性であり,年齢の中央値は34歳(四分位範囲:29-41歳)であったこと,18歳未満の症例は1.3%(1,154/90,308例)であり,333 例が5歳未満であったこと,性的指向(sexual orientation)の情報が得られた症例のうち,85.4% (29,244/34,240例)がMSMであったことが報告されている.また,感染経路の判明しているもののうち,83.3%(18,273/21,935例)が性的接触による感染であった.医療従事者の症例も1,263例報告されているが,ほとんどは医療機関外での感染であった3.陰部病変を有するMSMにおける性的接触での伝播が示唆されており,性的な関係のネットワークで相互につながるコミュニティの一部にエムポックスが入った可能性があることが指摘されている10
 一方で,海外渡航歴はあるものの感染経路不明の小児例の報告11や小児の家庭内感染の報告12,保健医療従事者の接触(fomite)感染13,医療従事者の針刺し事故での感染の報告14,ピアスやタトゥーの施術施設で消毒が不十分な器具を介したと考えられる利用者間の感染伝播の報告15もあり,性的接触以外での感染についても注意が必要である.
 2023年以降にDRCを中心に感染拡大しているクレードIbエムポックスウイルスに関しては,MSM間における感染以外に,家庭内感染,異性間の性交渉などによる流行も確認されている2

Ⅲ 国内発生状況

 エムポックスは,感染症法上で4 類感染症に位置づけられており,患者もしくは無症状病原
体保有者を診断した医師,感染死亡者及び感染死亡疑い者の死体を検案した医師は,ただちに
最寄りの保健所への届出を行う必要がある.
 2022年7月25日に,欧州でその後エムポックスと診断された者と接触した後,帰国後に発症した東京在住の成人男性が,エムポックスと診断された1
 疫学情報が公開されている2025 年3月21日時点で251例が届け出されている(図1-1)16
 届出症例は1例が女性で,残りはすべて男性であり,19都府県で届け出された.届出自治体別症例数の上位5自治体は,東京都188例,大阪府22例,神奈川県7例,千葉県6例,埼玉県・愛知県5例であった.これまでに届出時点の死亡例は確認されていないが,2023年9月に診断された症例1例の死亡が確認され,国内初の死亡例として,12月13日に厚生労働省が公表した(表1-1).
 症状については,発疹が226例(90.0%)にみられ,発熱が180例(71.7%),リンパ節腫脹が88例(35.1%)でみられた.海外渡航歴のない症例が243例(96.8%)であり,特に2022年38週以降は海外渡航歴のない症例が主体である.また,現在,日本国内において,アフリカ諸国のMPXVクレードIの流行地域への渡航に関連する症例も探知されていない.
 2025年3月17日時点で確認されている症例251例のうち,家庭内感染の1例を除き250例が男性であった.239例(95.2%)において推定・確定される感染経路として接触感染があったことが確認されている.また,180 例(95.2%)において発症前21日間に性的接触があったことが把握された(表1-1)16.海外における報告と同様に,国内においても男性同士の性的接触による感染伝播が中心となっていることが示唆される.
 なお,2023年5 月2 日までは,厚生労働省のホームページで,患者の年代,性別,症状,医療機関受診日,居住自治体(居住地),海外渡航歴,その他(患者の状態)について公表されていたが,2023年5 月12日以降は,患者の自治体について公表される形に変更になり,2023年7月1日以降は,原則毎週金曜日に症例数が更新される形となり,2025年3月2日時点で,合計251例が報告されており、グレードI bの報告はない1

図1-1 診断週別エムポックス届出数 (2022 年5 月2 日~ 2025 年3 月9 日 )16
( 疫学週2022 年第 18週~ 2025 年第 10 週)
( n=251)(2025 年 3 月 17 日集計時点)(感染症発生動向調査より)
図1-1 診断週別エムポックス届出数 (2022 年5 月2 日~ 2025 年3 月9 日 )
表1-1 エムポックス探知例の特徴(2022 年5 月2 日~ 2025 年3 月9 日)16
( 疫学週 2022 年第 18 週~ 2025 年第 10 週)(n=251 2025年 3 月 17 日集計時点)
表1-1 エムポックス探知例の特徴(2022 年5 月2 日~ 2025 年3 月9 日)

Ⅳ 海外発生状況

 2022年5月7日に,英国は,世界保健機関 (WHO)にエムポックスの常在国であるナイジェリア渡航後のエムポックス患者の発生を報告した.以降,欧米を中心に,常在国への渡航歴や患者への接触歴のないエムポックス症例が報告され, 2022年から2023年にかけて,欧州や米国など,これまで流行がみられなかった複数の国と地域で渡航歴がなくエムポックス患者との疫学的リンクの確認できない患者が複数報告され世界的な流行となった.この流行の主たるクレードは,クレードⅡで,男性間の性交渉を行う者(Men who have Sex with Men: MSM)における性交渉時の皮膚・粘膜接触による感染事例が多く報告された.これらの事例を受け,WHOは,2022年7月21日にエムポックスに関する2回目の国際保健規則(IHR)緊急委員会を開催し,WHOは7月21日にIHRに基づく「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当するか議論を行った.緊急委員会の意見をふまえ,7月23日にWHO事務局長は今回のエムポックスの流行が「エムポックスは,国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)である」と宣言した17.以降, WHO加盟国は協力しながら, 対応を行った.2023年5月10日に開催された5回目のIHR緊急員会の意見を踏まえて,5月11日にWHO事務局長は今回のエムポックスの流行について,一部地域での報告が続いているものの,世界的に感染症が持続的に減少しており,過去3カ月間に報告された報告数は,前の3カ月間に比べてほぼ90%減少していること,疾患の重症度や臨床症状に変化がないことを確認できたことなどから,PHEICに該当しないと緊急事態の終了を宣言した18.そのうえで,事務局長は,世界的に減少傾向にある一方で,特定のコミュニティではウイルスの感染が続いていることを指摘した.さらに事務局長は,各国がサーベイランスと対応能力を維持し,将来のアウトブレイクに対処するために,既存の国家保健プログラムにエムポックスの予防とケアを統合し続けることの重要性を強調した18.また,2023年8月21日に,WHO事務局長からIHRに基づく恒常的勧告が発出された19.この「恒常的勧告」が発出されたのは初めてのことである.
 全世界では2023年5月11日にPHIECの終了が宣言されたが, アフリカのコンゴ民主共和国で, これまで報告されていたクレードIとは異なるクレードIbによるエムポックスの流行が継続し, 2023年に過去の最大の感染者数と死亡者数が報告された.クレードIIの主な感染経路はMSMにおける性交渉時の皮膚・粘膜接触であったが, コンゴ民主共和国国内では男女間及び同性間での性的接触, 家庭内感染により感染が拡大していると報告された.2024年7月には, コンゴ民主共和国およびその周辺国への感染拡大を受けて, アフリカ疾病管理予防センターは8月13日に「アフリカ大陸安全保障上の公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of Continental Security; PHECS)」に該当すると宣言した.さらにWHOは, 2024年8月14日に今回のエムポックスの流行が「PHEIC」に該当すると宣言し, 2025年1月17日時点でPHEICは継続している20
 WHOに加盟している常在国を含む127の国と地域から,2024年11月30日時点で, 2022年1月1日以降に診断された117,663例の確定症例と2例の疑い例(うち死亡263例)が報告されている20.2022年1月1日以降, 2024年11月30日時点で, 世界で感染例が多い10カ国は, アメリカ(34,349例), ブラジル(13,236例), コンゴ民主共和国(10,492例),スペイン(8,443例), フランス(4,371例),コロンビア(4,280例), メキシコ(4,192例),英国(4,146例), ドイツ(4,040例), ペルー(3,949例)で, これらの国々を合わせると, 世界全体で報告された症例の77.8%を占める20.死亡例が多い主な国は米国63例, コンゴ民主共和国45例, メキシコ35例, ペルー23例,ブラジル16例である20.96.3%(90,793/94,279例)が男性で, 性的指向が報告された症例の86.7%(30,867/35,596例)がMSMで, 年齢は, 中央値34歳(四分位範囲:29-41歳)で, 年齢が報告された症例の1.3% (1,268/98,267例)が0-17歳, 0.4%(361/98,267例)が0-4歳である20
 コンゴ民主共和国以外におけるクレードIbによる感染例は, 2025年1月9日時点で, ブルンジ(3,035例), ウガンダ(1,552例), ルワンダ (69例), ケニア(31例), ドイツ(6例), 英国(5例), 中国(5例), ザンビア(3例), ベルギー(2例), ジンバブエ(1例), スウエーデン(1例), タイ(1例), インド(1例), 米国(1例), カナダ(1例), パキスタン(1例), フランス(1例)がWHOに報告されている21

参考文献

臨床像・合併症

Ⅰ.臨床像・合併症

1.2022年の流行以前:クレードⅠとクレードIIa

 モンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス:MPXV,以後エムポックスウイルスと表記)はゲノム解析によりクレードⅠ(コンゴ盆地系統群)とクレードII(西アフリカ系統群)の2つのクレードに分類される.2022年5月の流行以前,アフリカ中央部から西部にかけて限局的に流行していたウイルスは主にクレードⅠとクレードIIaである1 .致死率はクレードIが5~10%,クレードIIaは1%とクレードIの方が高い1.またいずれのクレードによる感染も,患者からのヒト-ヒト感染は家庭内での密接な接触による家族や子どもへの伝播であった1
 エムポックスは6~13日(最大5~21日)の潜伏期を経て発症し,発熱,頭痛,リンパ節腫脹などの前駆症状が1~5日程度持続する.前駆症状発症から3日以内に皮疹が顔面から始まり体幹,四肢へ遠心性・全身性に拡大する2.天然痘や水痘では,リンパ節腫脹を伴わないので鑑別に有用とされる.
 皮疹の好発部位は顔面が最多で,体幹および上肢や掌,下肢,足底,口腔粘膜が多い3-6.掌,足底の皮疹は,水痘では通常見られないため鑑別の上で有用である.典型的には丘疹,小水疱,膿疱,紅斑,痂皮,潰瘍など多種の皮疹が出現する3-6.皮疹は紅斑→丘疹→小水疱→膿疱→結痂→落屑と段階が移行し,皮疹の時相が一致していることが特徴である1,3-6.発症から2~4週間で治癒する.合併症は皮膚軟部組織の二次性細菌感染,肺炎,嘔吐・下痢に伴う脱水,結膜炎や角膜潰瘍などの眼病変5,7,8がある.稀な合併症として脳炎9や咽後膿瘍10などが報告されている.

2.2022年の流行:クレードIIb

 クレードIIbによる流行は2017年にナイジェリアで報告された.この流行ではその年までの最大の患者数が報告され,ほとんどの症例が都市部で検出された.2018年から2021年にカメルーン,中央アフリカ共和国,コンゴ民主共和国,ナイジェリア,コンゴ,シエラレオネの都市部で患者数が大幅に増加した.また,ナイジェリアで感染し,英国11,イスラエル12,シンガポール13,米国14で輸入症例が報告されたのもこの時期である.そして2022年に流行したエムポックスウイルスも,ナイジェリアのクレードIIbに由来するウイルスである.ヒト-ヒト感染を起こしやすいウイルスが皮膚の密接な接触である性交渉で伝播し,性的接触の機会が多いMSMコミュニティに入り込んだこと,国際的なヒトの往来が容易になっていたことが世界規模の流行になった理由である15
 この流行では,潜伏期が7~10日1,前駆症状を伴わない例が1割程度報告されている16,17.男性同士の性的接触が主な感染経路であることから肛門・直腸,口腔周囲の皮膚病変の割合が増え17,18,皮疹の数がそれほど多くない(中央値10個)1,時相の異なる皮疹が混在することも特徴的である17,19.図2-1に患者の皮疹を示す.また,皮疹を伴わず粘膜症状(直腸炎による肛門痛,テネスムスや咽頭炎による咽頭痛,嚥下時痛)を呈する患者も報告されている1
 この流行における頻度の多い合併症として蜂窩織炎,直腸炎,陰茎浮腫,扁桃腺炎・咽頭炎などが報告されている18,20,21.頻度は低いものの,注意が必要な病態としてウイルス性肺炎22,ウイルス性心筋炎23,角膜炎・結膜炎24,関節炎・骨髄炎25,26,播種性病変27,脳炎・脊髄炎28,29が報告されている.2022年5月以降の流行では性的接触による感染が多く,HIV,梅毒,淋菌,クラミジアなどの性感染症の合併例が報告されている18

3.2024年の流行:クレードIb

 2023年にコンゴ民主共和国でクレードIによるエムポックスの患者が増加した.その後,クレードIの中でもクレードIbというサブグレードに位置付けられたエムポックスウイルス30は持続的にヒト-ヒト感染を起こしていることが明らかとなり,当初DRCの東部に限定していたが隣接国や東アフリカ諸国にも流行が拡大し,2024年8月14日に2回目のPHEICが宣言された.また流行国への渡航に関連したクレードIbの輸入症例は,スウェーデン,タイ,インド,ドイツ,イギリス,アメリカ,中国,ベルギー,アンゴラ,ジンバブエ,カナダ,フランス,パキスタン,アラブ首長国連邦,オマーン(2025年2月19日現在)で報告されている31.この流行に関連した輸入症例は,まだ日本では報告されていない.クレードIbはヒト-ヒト感染を起こしやすい変異を獲得し1,性交渉で伝播しやすくなった.このため家庭内での密接な接触とMSMだけでなく男女異性間の性的接触によって感染が拡大している.
 現在進行形の本流行では,致死率が1.7~3.6%と報告され1,特に15歳未満の子どもに患者と死亡者が多い15.臨床的特徴が他のクレードと異なるか否かは今後の報告を待つ必要がある.

Ⅱ.HIV合併例

 HIV未治療でCD4陽性リンパ球数(CD4数)が低値の合併例では,前述I-2.に記載の症状が長引き,播種性病変をきたす可能性がある.CD4数350/µL未満のHIV合併エムポックス症例382名における19カ国にまたがる検討では,死亡症例は全てCD4数200/µL 未満であり,死亡率はCD4数 100~200/µL で4%(94例中4例), CD4 数100/µL 未満で27%(85例中23例)であった.予後はCD4数のみでなく血中ウイルス量(VL: Viral load)とも強く関連しており,CD4数100/µL未満でVLのデータが得られている74例の死亡率は,VL 50コピー/mL未満で7%(14例中1名)であった一方で,VL 10,000 コピー/mL以上では30%(47例中14名)と大きく異なっていた22

図2-1 エムポックスの皮疹
図2-1 エムポックスの皮疹

 重症例の症状は多岐にわたり,CD4 数100/µL未満では,CD4 数300/µL超の症例と比較して,広範な壊死性皮膚病変(54% vs 7%),細菌感染(44% vs 9%),結膜炎などの眼病変(15% vs 1%),肺病変(29% vs 0%),肺結節(9% vs 0%)などの合併症の頻度が高い.未治療でCD4数200/µL未満のHIV合併例は,重症化ハイリスク例と考えられ,エムポックス診断時のHIV感染症合併の有無の検索と陽性時のCD4数の評価が重要である.抗HIV療法によりウイルスコントロールが良好な例においては,非HIV合併症例と同様,重症化は稀であると考えられる.
 また,抗HIV療法(Antiretroviral therapy:ART)による免疫状態の改善により,症状が悪化する免疫再構築症候群(Immune Reconstitution Inflammatory Syndrome:IRIS)が,HIV合併例の予後に影響することが明らかになっており,前述の報告では,382例中85 例(22%)でARTが開始・再開され,このうち 21例(25%)がIRIS が疑われる症状の増悪を認め〔(CD4 数100/µL 未満で38%(40例中15例),CD4 数100~200/µL で26%(23例中6例)〕,その半数以上の12 例(57%)が死亡している.
 HIV患者で,肛門や性器周囲に発疹や潰瘍性病変を認める場合は,常に本症の可能性を念頭におくことが重要である.重度免疫不全例での本症の死亡率はきわめて高いため,可能性を完全に除外できない場合には,積極的にエムポックスの診断のための検査を行うことが救命につながる.

Ⅲ.エムポックスの病態

 エムポックスは基本的に時間の経過とともに自然治癒する疾患である.重症例や重症化ハイリスク例は重篤な状態となる可能性があり,特に免疫不全患者においては死亡例も報告されているため,重症例と重症化ハイリスク例は早期に治療介入することが推奨されている32,33.軽症例は基本的に自然治癒することがほとんどであり,皮疹による疼痛に対し鎮痛薬などの対処療法が考慮される34
 2022年, 米国疾病予防管理センター(CDC)では,エムポックスの病態を軽症例, 重症例,重症化ハイリスク例の3つに分類し,重症例や重症化ハイリスク例に対してテコビリマトの使用を推奨していたが,その後,2024年12月にテコビリマトcompassionate useの対象者を下記1~3の背景を有するエムポックス患者に限定した35.

表2-1 エムポックス患者の背景
表2-1 エムポックス患者の背景

Ⅳ.無症状病原体保有者

 無症状病原体保有者の存在が欧米各国の研究において報告されている.これらの研究では,淋菌・クラミジア検査用の直腸ぬぐい検体や咽頭ぬぐい・尿・直腸ぬぐい検体の混合検体などの残検体が用いられ,流行状況により1.3~6.5%程度のエムポックス陽性率が報告されている36,37.無症状病原体保有者の中には,症状が軽微かその症状をエムポックスと認識していない(unrecognized)状態や,何らかの理由で診断に至っていない(undiagnosed)状態が混在していることも考えられる.無症状病原体保有者の感染性は不明だが,無症状病原体保有者より検出されたエムポックスウイルスDNAの複製能力が確認されており3,本人が感染を自覚せずに他者に感染させている症例は存在すると考えられる.無症状病原体保有者においては,検査陽性判明日を起算して原則8週間,性的接触を控えることが推奨される.
 東京近郊で2022年1~3月に実施された無症状のMSMにおける研究では,1,346名のうち5名(0.4%)が陽性となり,うち3名が研究期間中無症状のままであった.同期間において,研究参加後に3名が後日症状を発症し新たにエムポックスと診断されており,無症状者3名に対し有症状者は5名であった.無症状病原体保有者の診断は,検査のタイミングに左右される一方,有症状者は比較的捕捉されやすいことを考慮すると,無症状または認識されない病原体保有者は稀ではないことが示唆される38

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診療の実際と診断・届出

Ⅰエムポックス診療の実際

1.診療の留意点

エムポックスの診療での主な留意点として,以下の4点をあげる.

  • ①皮疹の性状や分布,全身症状,性交渉歴からエムポックスを疑うが,2022年以降のクレードⅡbエムポックスウイルス流行では古典的な経過を取らない症例がある.
  • ②診療経験が乏しいうちは,エムポックスを疑うことができないかもしれない.そのため,他の疾患と臨床診断をして治療を行ったが,改善しない症例に遭遇する可能性がある(例:性器ヘルペスと診断して治療したが皮疹が改善しない).つまり,通常の治療で改善しない場合に,エムポックスを鑑別できるかどうか.
  • ③他の性感染症との重複感染が報告されているため,他の性感染症の確定診断がついたとしても,エムポックスの合併を疑う必要がある.
  • ④2023年以降,コンゴ民主共和国を中心にクレードIbエムポックスウイルスの感染が拡大し欧米やアジアでも流行地からの渡航者での感染例が報告されている1ため,流行地への渡航歴聴取も重要である.

2.病歴聴取,身体診察のポイント

 クレードⅡbエムポックスウイルスによるエムポックスを疑うポイントは,①皮疹の性状,②皮疹の分布,③皮疹以外の症状,④性交渉歴である2,3.①~④をもとに鑑別診断をあげる.

1)皮疹の性状

 エムポックスの皮疹は,紅斑→丘疹→小水疱→膿疱→結痂→落屑とステージが順次移行し,加えて,臨床経過のある一時点において,同一ステージの皮疹を呈すると報告されていた.この点は,異なるステージの皮疹が混在する水痘との鑑別点である.しかし,水痘のように異なるステージの皮疹が同時にみられることがあり,留意が必要である.

2)皮疹の分布

 皮疹は,顔面から始まり体幹部へと拡大していく.しかし,皮疹の分布が従来の報告とは異なる場合がある.具体的には病変が会陰部・肛門周囲や口腔などの局所に集中しており,顔面から体幹部へと移行していく経過が追えない症例も存在する.

3)皮疹以外の症状

 皮疹の出現前に発熱,頭痛,リンパ節腫脹などの全身症状が先行するとされるが,必ずしも認められない事例が報告されている.加えて,肛門直腸病変による肛門痛,テネスムス,血便や,陰茎・尿道病変による排尿困難をきたした事例の報告がある.

4)性交渉歴

 MSM(Men who have Sex with Men)の間で流行している.性交渉時の皮膚・粘膜接触による感染事例が多い.男性の症例が多いが,少ないながらも小児,女性の報告もあるので留意する.なおクレードIbエムポックスウイルスではMSM間における感染以外に,異性間の性交渉, 家庭内感染により感染が拡大している. 性交渉以外のsick contactについても聴取が必要である.

3.鑑別診断

 鑑別疾患は多岐にわたる.診療する際は,エムポックス以外の疾患の季節性や流行状況も念頭にいれ鑑別診断を行う必要がある.それぞれの疾患の特徴は成書を参照されたい.

1)全身の発疹を呈する場合

 エムポックスとの重要な鑑別疾患は,疾患の頻度が多い水痘,梅毒,手足口病,カポジ水痘様発疹症などである.

2)性器・肛門周辺のみの皮膚病変の場合

 性器ヘルペス,梅毒,帯状疱疹,毛嚢炎,伝染性軟属腫などが鑑別診断にあがる.

3)直腸炎を呈する場合

 淋菌,クラミジア,梅毒,性器ヘルペス,赤痢アメーバ症などの性感染症に加え,炎症性腸疾患(クローン病,潰瘍性大腸炎)が鑑別診断にあがる.

Ⅱ.診断・届出

 エムポックスの診断を行うためには各都道府県等の地方衛生研究所において,行政検査による確定検査を実施する必要がある.

1.検査方法

 確定診断には行政検査による確定診断(PCR 検査)が必要である.
 検体採取方法は,水疱内容液や水疱蓋などの病変部を採取し,水疱が保たれている場合は,水疱内容液を注射器で吸引し採取,水疱が自壊している場合は,水疱内容液および自壊組織をスワブでぬぐい,痂皮となっている場合は,ピンセットで痂皮を採取し,それぞれスクリューキャップのチューブに入れる.詳細については『病原体検出マニュアル エムポックスウイルス』(第4版(2023 年 6 月国立感染症研究所)を参照されたい4
 疫学的用途などで無症状者に対して検査を実施する場合は,直腸ぬぐい検体や咽頭スワブ,または,うがい液,尿,これらの混合検体などが使用されることがあるが,検出感度は低下する5,6 .これらの採取方法は通常の方法に則り採取する.

2.診断,届出の流れ

 エムポックスは感染症法における4類感染症に位置づけられており,診断した医師は最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に対して直ちに届出を行うことが義務づけられている.エムポックスを疑う症状が見られた場合の対応については,「エムポックスに関する情報提供及び協力依頼について」〔令和4年5月20日付け厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡(令和6年8月16日最終改正)〕7に示されている.診断,届出の流れを図3-1に示す.

図3-1 エムポックス:診断,届出の流れ
図3-1 エムポックス:診断,届出の流れ
【暫定症例定義】
1)疑い例

 原則,下記①~②すべてを満たす者とする
 (臨床的にエムポックスを疑うに足るとして主治医が判断した場合についてはこの限りではない).

①少なくとも次の1つ以上の症候を呈している.
  • 説明困難*な急性発疹(皮疹または粘膜疹)
  • 発熱(38.5℃以上)
  • 頭痛
  • 背中の痛み
  • 重度の脱力感
  • リンパ節腫脹
  • 筋肉痛
  • 倦怠感
  • 咽頭痛
  • 肛門直腸痛
  • その他の皮膚粘膜病変

*水痘,風しん,梅毒,伝染性軟属腫,アレルギー反応,その他の急性発疹および皮膚病変を呈する疾患によるものとして説明が困難であることをいう.ただし,これらの疾患が検査により否定されていることは必須ではない.

②次のいずれかに該当する.
  • 発症21日以内に複数または不特定の者と性的接触があった.
  • 発症21日以内にエムポックスの患者,無症状病原体保有者または①を満たす者との接触(表3-1レベル中以上)があった.
  • 臨床的,疫学的(流行地域への渡航歴がある等)にエムポックスを疑うに足るとして主治医が判断をした.
2)接触者

 エムポックス患者(確定例)または疑い例と以下の表3-1に示す接触状況があったものをいう.

表 3-1 接触状況
表 3-1 接触状況
【診断(行政検査までの手順)】
  • ①エムポックス疑い例に該当する患者を診察
  • ②疑い例の探知について,最寄りの保健所に相談.
  • ③保健所の指示等を踏まえ,表3-3で示す検査材料について病原体検出マニュアルを参照の上,検体を採取し,保健所へ検体を提出(残余検体については,保健所から求めがある場合に備え,結果判明まで保管しておくことが望ましい).
  • ④行政検査においてエムポックス陽性と判明した場合は,感染症法に基づき,届出.
【届 出】

 エムポックスは感染症法上4類感染症に位置づけられおり,感染症法第12条第1項に基づき,エムポックスと診断した医師は,直ちに最寄りの保健所に届出なければならない.エムポックスの届出基準による届出対象は,以下のとおりである7,8

〈患者(確定例)〉

 以下の表3-2の臨床的特徴を有する者を診察した結果,症状や所見からエムポックスが疑われ,かつ,表3-3の検査方法により,エムポックス患者と診断した場合.

〈無症状病原体保有者〉

 診察した者が以下の臨床的特徴を呈していないが,表3-3の検査方法により,エムポックスの無症状病原体保有者と診断した場合.

〈感染症死亡者の死体〉

 以下の臨床的特徴を有する死体を検案した結果,症状や所見から,エムポックスが疑われ,かつ,以下の表3-3の検査方法により,エムポックスにより死亡したと判断した場合.

〈感染症死亡疑い者の死体〉

 表3-2の臨床的特徴を有する死体を検案した結果,症状や所見から,エムポックスにより死亡したと疑われる場合

表3-2 臨床的特徴
表3-2 臨床的特徴
表3-3 検査方法
表3-3 検査方法
参考文献

治療

Ⅰ.抗ウイルス薬などの臨床応用状況

 エムポックス患者に対する治療の基本は,支持療法と疼痛コントロールである.しかし,免疫不全,併存疾患などの要因により,重症化する場合がある.このため,2022年に米国疾病予防管理センター(CDC)では,エムポックスの病態を軽症例, 重症例,重症化ハイリスク例の3つに分類し,重症例や重症化ハイリスク例に対してテコビリマトの使用を推奨していた1.しかし,STOMP試験2やPALM007試験3において,テコビリマトの安全性は証明されたが,プラセボ群と比較してテコビリマト投与群で病変消失までの時間は短縮されず,明確な有効性は示されなかった4.この結果を受けて,2024年12月にCDCはテコビリマトcompassionate useの対象者を表4-1の1~3の背景を有するエムポックス患者に限定した5. また,重度免疫不全によりエムポックスの症状が遷延もしくは生命を脅かす場合,テコビリマトに加えて,シドフォビルもしくはブリンシドフォビル,ワクシニア免疫グロブリン(Vaccinia Immune globulin:VIG)の併用を考慮するよう推奨している6

表4-1 エムポックス患者の背景
表4-1 エムポックス患者の背景

 2022年7月以降は全国7医療機関(市立札幌病院,東北大学病院,国立国際医療研究センター, 藤田医科大学病院,りんくう総合医療センター,福岡東医療センター,琉球大学病院)において,わが国におけるエムポックス患者に対する治療提供体制を構築し,体制を維持している.具体的には, 2025年1月時点で下記4つの特定臨床研究が実施されている.

1)エムポックスに対する経口テコビリマット治療の有効性および安全性を検討する多施設共同非盲検二群間比較試験

 治療薬として輸入されたテコビリマトを,国立国際医療研究センターを含む全国7医療機関において投与できる体制を構築した.具体的には,特定臨床研究「エムポックスと天然痘に対する経口テコビリマット治療の有効性および安全性を検討する多施設共同非盲検二群間比較試験」を立ち上げ(jRCTs0312201689:2022年6月28日公開),同薬剤による治療が提供できる体制を整備した7.2022年7月26日より患者登録を開始しており,2024年12月までの累計登録患者数は31例である.なお、2024年12月にテコビリマトは薬事承認されたが8,2025年1月時点では一般流通しておらず,特定臨床研究は継続となっている.

2)エムポックスに対するVIGの有効性および安全性を検討する多施設共同単群試験

 米国では重症化リスクのあるエムポックス患者の難治例や死亡例が報告されており,テコビリマト投与に加え,ステロイドパルス療法,VIG,血漿交換などが行われている.CDCは,2022年10月13日にエムポックスを含むオルソポックスウイルス感染症に対するVIGの使用を治験薬の拡大アクセス事業(Expanded Access IND Program)で承認した9.また,オーストラリアではテコビリマトとVIGを治療選択肢として使用できる診療体制を整えた10
 このような背景を受け,本邦でもエムポックスに対するVIGの有効性と安全性を検証し,同薬剤を使用できる体制を整えるため,特定臨床研究「エムポックスと天然痘に対するワクシニア免疫グロブリンの有効性および安全性を検討する多施設共同単群試験」を立ち上げ,全国7医療機関においてVIGを使用できる体制を構築した(jRCTs031220744:2023年3月30日公開)11.2023年9月6日より患者登録を開始しており,2024年12月までの累計登録患者数は2例である. 

3) エムポックスに対するシドフォビル,経口プロベネシド併用療法の有効性および安全性を検討する単施設単群試験

 エムポックスに関して重症化は稀とされてきたが,今般の国際的な流行における,未治療HIV感染症者などの免疫不全を有するハイリスク群において,致死的な経過をたどるリスクが認識されつつある.流行が先行した欧米では,テコビリマトと他薬剤の併用療法が提案されており,その中にシドフォビルが含まれる.一方で,シドフォビルのエムポックスに対する臨床的有効性は確認されていない.したがって,本邦において同薬剤の有効性と安全性を検討するため,特定臨床研究「エムポックスに対するシドフォビル,経口プロベネシド併用療法の有効性および安全性を検討する単施設単群試験」として国立国際医療研究センターで立ち上げた(jRCTs031230652:2024年2月22日公開)12

4) エムポックスウイルスによる角結膜炎に対するトリフルリジン点眼薬の有効性および安全性を検討する多施設共同単群試験

 エムポックス感染症の最も重大な後遺症の1つは,角膜瘢痕化とそれに伴う視力喪失である.2010年から2013年にコンゴ民主共和国で確認されたエムポックス確定症例のほぼ25%が,感染症の症状として結膜炎を報告した.トリフルリジンはチミジル酸シンターゼ阻害薬として抗ウイルス活性があり,諸外国でヘルペス1型及び2型の原発性角膜炎及び再発性上皮性角膜炎の治療に承認されている.また,オルソポックスに対する活性がin vitroで示されており,重症エムポックス患者における角膜炎に対してトリフルリジン点眼薬が投与された症例報告が散見された.一方,トリフルリジン点眼薬がエムポックスウイルスによる角結膜炎に対して有効であることを示すエビデンスレベルの高いデータは乏しく,有効性は確立されていない.したがって,本邦において同薬剤の有効性と安全性を検討し,同薬剤を使用できる体制を構築した(jRCTs031240048:2024年4月25日公開)13
 全身投与薬剤を用いた上記特定臨床研究1~3)は,下記の通りプラットフォーム試験化を行った.「エムポックス及び天然痘入院患者を対象とした治療法の安全性及び有効性を評価する多施設共同プラットフォーム」サブ01:テコビリマット,サブ02:ワクシニア免疫グロブリン静注製剤については2024年5月27日にjRCT公開した(サブ01:jRCTs03124011014,サブ02:jRCTs03124011115).

Ⅱ.免疫再構築症候群(IRIS)の対応

 未治療のHIV合併症例におけるART開始に伴うIRIS発生時の対応に関して,現時点で明確なエビデンスは存在しない.また,ARTの開始時期に関しては,可能な限り早期に開始すべきである.HIV合併例で重症化のリスクが特に高いCD4数100/µL未満の症例では,エムポックス以外の日和見感染症が合併している可能性も高くIRISが疑われる際には,その他の病原体の検索も重要である16,17.特に,直腸などの腸管に病変が存在した患者で,IRISを契機に死亡したと思われる症例が報告されている.IRISによる腸管病変の増悪による菌血症や腸管穿孔,イレウスなどが考慮されるが,CD4数が低値の場合,サイトメガロウイルス感染による腸管病変も合併している可能性が高く,症状増悪の原因病原体が単一ではない可能性も考慮に入れる必要がある17
 IRIS発症時に使用されるステロイドの役割についても,エムポックスに関しては現時点ではエビデンスはない.ステロイドによるエムポックス自体の増悪に影響する可能性もあり,今後のエビデンスが待たれる.

Ⅲ. 重症例の対応

 重症例,免疫不全の患者や小児,妊婦などの重症化ハイリスク例は,重篤な状態となる可能性があるため,早期よりテコビリマトによる治療を検討する必要がある1
 重度の免疫不全がある患者やテコビリマト投与後も症状が進行する患者においては,シドフォビルやワクシニア免疫グロブリンを併用した症例や,眼病変に対しトリフルリジン点眼薬を併用した症例が報告されている18,19.しかし,いずれの薬剤も日本では未承認である.

Ⅳ.合併症のマネジメント

1.疼痛コントロール

 2022年5月以降の流行における入院の主な理由の一つは,咽喉頭または肛門・直腸病変の疼痛である20.疼痛の程度としてはNumerical Rating Scale でscore 7~8の疼痛を訴えることが多い.アセトアミノフェンやNSAIDs,プレガバリン,ガバペンチンなどの鎮痛薬の内服のほかリドカイン軟膏の局所塗布が有効とされるが21,オピオイド点滴による鎮痛を要する場合もある22.肛門ヘルペスも同様に肛門会陰部の皮疹,疼痛を呈することがあるので,性的接触がエムポックス感染の契機となっている場合には単純ヘルペスウイルスの重複感染に注意する.

2.皮膚軟部組織の合併症

 エムポックスによる皮疹の増悪により,皮膚軟部組織の二次性細菌感染が生じうる.HIV合併感染例では皮疹が全身に播種した症例のほか,壊死・出血を伴う皮疹例で蜂窩織炎,皮下膿瘍,続発する菌血症などが報告されている16.皮膚の発赤,熱感,腫脹を伴う場合は皮膚軟部組織感染症の合併を考慮し抗菌薬治療を行う.

3.消化器の合併症

 2022年,クレードⅡbによる流行では,特に直腸炎の合併が多く,メタアナリシスによればエムポックス症例の11%が直腸炎を合併している23.これは同性間性交渉を行う男性において,肛門性交によりエムポックスウイルスが直腸粘膜に直接侵入・進展することが原因と考えられている24.上述の肛門痛のほか,排便困難,出血を呈することがあり,排便時痛が強い場合は緩下剤の併用や腸管安静を行う.診断のために大腸内視鏡検査を検討する.また,直腸穿孔25 や肛門周囲膿瘍26などの外科的治療介入を要する合併症も報告されているので,症状が強い場合には CTやMRI 画像検査などを検討する.

4.泌尿器の合併症

 男性では陰茎浮腫による嵌頓包茎,排尿障害が生じうる.用手的包皮反転で改善が得られることが多い21

5.咽喉頭の合併症

 上気道の病変としては扁桃腫大,咽頭炎,急性喉頭蓋などが報告されている.疼痛以外に扁桃腫大などの器質的変化によって経口摂取困難,気道狭窄を呈する場合がある.鎮痛薬のほか,腫脹が強い場合には短期間のステロイド投与が治療選択肢である27.扁桃腺炎や急性喉頭蓋炎により気道緊急を生じた場合にはエアロゾル曝露対応をしつつ気道確保を行う.

6.呼吸器の合併症

 HIV合併感染例では肺炎の合併が多く28,びまん性多発結節影や胸水貯留を呈することが報告されている16.ただし,HIV患者では他の日和見感染症による肺病変の可能性があるので気管支肺胞洗浄液,経気管支肺生検検体,胸水検体のエムポックスウイルスPCRとMultiplex PCRを検討する.二次性の細菌性肺炎を合併している場合には抗菌薬を追加する.

7.循環器の合併症

 胸痛を訴えや心不全徴候がみられる場合にはウイルス性心筋炎を考慮する.心電図変化に乏しい場合は心臓MRIが有用である.致死性不整脈や心不全の発症に留意してモニタリングを行う.心筋炎9例のレビューでは,4例で抗ウイルス薬の投与が行われ,その他の5例は支持療法のみで,全例が軽快している29.ウイルス性心筋炎の治療選択肢である免疫グロブリン,ステロイド,シクロスポリン,アザチオプリンの使用に関してはエムポックス症例での報告がなく有効性は不明である.

8.中枢神経の合併症

 中枢神経系の症状としては頭痛が最も多く,筋痛,めまい,倦怠感などの訴えが多い.不安・焦燥の訴えも多く30,偏見や差別への不安から自殺に至った症例も報告されている31ため,入院・個室隔離する場合は注意を要する.抗不安薬のほかカウンセリングなどの精神科的サポートも並行して行う.けいれんが2.7%,錯乱が2.4%, 脳炎が2.0%で報告されており32,必要に応じて鎮静,抗てんかん薬の投与を行う.テコビリマトはミダゾラムの血中濃度を低下させるため33,両者を併用する場合はミダゾラムの増量を行う.エムポックスの診断が確定している患者では脳脊髄液のエムポックスウイルスPCRに加えて,他疾患の除外のため脳脊髄液のMultiplex PCRを積極的に考慮する.PubMedでの検索では2023年5月1日の時点でエムポックスウイルスによる髄膜炎の報告はない.脳脊髄炎に対して,免疫グロブリン療法,ステロイドパルス療法,血漿交換療法,リツキシマブ投与の併用で改善を得た報告がある34,35

9.眼の合併症

 角膜炎・結膜炎の頻度が高く,そのほか角膜・結膜の潰瘍,眼瞼膿疱などが報告されている36.オルソポックスウイルスによる眼病変に有効とされるトリフルリジン点眼薬を併用した報告があるが37,2025年3月15日時点で,わが国では未承認薬である.結膜充血や眼脂増加がみられる場合は,二次性の細菌性結膜炎を念頭に眼科診察を依頼する.また,眼窩蜂窩織炎も生じ得るので16,眼周囲にエムポックスの皮疹がある症例で眼瞼の腫脹や発赤,眼球運動制限を伴う場合には画像評価を検討する.

10.骨・関節の合併症

 膝関節の単関節炎合併例が報告されている38,39.関節痛はエムポックスの皮疹出現と同時期から出現する.関節MRIでは関節液貯留,滑膜炎所見,骨への炎症波及を呈することがある.関節液は単球優位の細胞数増加がみられ,エムポックスウイルスPCRが陽性となる.性的接触がエムポックス感染の契機となっている場合には,淋菌性関節炎やクラミジアによる反応性関節炎の可能性があるので,これらの性感染症の検索を行う.治療は鎮痛薬による対症療法であり2~3週間で改善する.

Ⅴ.療養上の注意事項

 皮疹が完全に治癒し,落屑するまでの間(概ね21日程度)は周囲のヒトや動物に感染させる可能性があるため,感染者はヒトやペットの哺乳類との接触を避けるべきである.寝具,タオル,食器の共用を避けることも大切である.また,小児や妊婦,免疫不全者との密な接触も避けるべきである.さらに,性的接触についてはすべての皮疹が消失してから原則8週間は避けるべきである40
 接触者についても,接触後21日間は症状が出ないか注意し,発症時には速やかにヒトやペットの哺乳類との接触を避け,医療機関を受診することが求められる.また,症状が出ていない場合でも,小児や妊婦,免疫不全者との密な接触や,性的接触をできる限り控えるべきである.
 エムポックスの患者または疑いとされた人は当面の間,献血は控えるよう厚生労働省から示されている.また,接触者は接触後21日間は献血を避けるべきである41
 感染者が飼育しているペットに関して,感染者が発症後にペットと接触していない場合,自宅外で世話をしてもらうように知人などに依頼し,回復後に自宅を消毒してから自宅に戻すことが推奨される.また,感染者が発症後にペットと接触した場合は,最終接触から21日間,ヒトや他の哺乳類との接触を避けることが推奨される.感染者が自宅でペットの世話をする場合は皮疹を覆い,サージカルマスクを着用することが推奨される.一方で,ペットがエムポックスウイルスに感染した可能性がある場合,ケージなどに隔離し,接触する場合は手袋,サージカルマスク,目の防護具,ガウンの着用が推奨される.

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    https://www.mhlw.go.jp/content/11127000/000977965.pdf [2024/3/28 閲覧]

感染対策

Ⅰ.医療機関(病院)における対策

  • エムポックス疑い例やエムポックス患者に接する場合は,接触,飛沫,空気予防策を実施し,可能な範囲で患者を換気良好な部屋(個室が望ましい)に収容し,N95マスク,手袋,ガウン,眼の防護具を適切に着用する1,2
  • 医療従事者は,個人防護具の装着前と外した後を含め,標準予防策に沿って手指衛生を行う1,3
  • 適切な手指衛生と個人防護具の使用に関し,平時から定期的に訓練を行っておく.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者には,可能な限り不織布マスクを適切に着用させ,水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する1,2
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者が滞在しうる環境は,通常の清掃を行い,その後,消毒(消毒用エタノールなど,エンベロープウイルスに対して強い消毒効果を発揮する薬剤)を行う1,4
  • 廃棄物は感染性廃棄物として扱う1.病変部位の体液で汚染された医療廃棄物は,体液乾燥による塵埃感染防止の観点から,しっかりと密閉して廃棄することが望ましい.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者の診察台は,不織布シーツやビニールシーツなどを使用し,診察後は廃棄,もしくは薬剤(前述)を使用した消毒を行う.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者のリネン類などは,破棄が望ましいが,破棄が難しい場合は,上記個人防護具を付けて扱い,不用意に振り回したりせず,静かにビニール袋などに入れて密閉した状態で運搬し,洗濯機に入れ,通常の洗剤を用いて洗濯を行う.洗濯した後は再利用可能である.リネン類などを扱う際は,手指衛生(流水と石鹸による手洗い,または擦式アルコール手指消毒薬での消毒)を頻回に行う1,2
     なお,WHO,米国CDC,英国UKHSA では,温水による洗浄を推奨しているが,根拠となる十分なエビデンスはまだない1,2,5
  • 感染の危険がある曝露があった場合,曝露後予防接種を考慮する(「6 ワクチン」参照).曝露後4 日以内の接種が望ましいが,14 日以内であれば効果が期待できる.
  • 医療従事者の針刺し切創によるエムポックス罹患報告6-11もあることから,検体採取時の針刺しには特に注意し,針刺し切創の際は,すみやかに報告し,曝露後予防接種を考慮する.

*医療機関における具体的な感染対策として,国立国際医療研究センターで使用している『エムポックス感染対策マニュアル(2023 年11月9日)』を参考に表(章末)に示す6

Ⅱ.クリニック(診療所)における対策

  • エムポックス疑い例やエムポックス患者に接する場合は,接触,飛沫,空気予防策を実施し,可能な範囲で患者を換気良好な部屋(個室が望ましい)に収容し,N95マスク,手袋,ガウン,眼の防護具を適切に着用する1,2.なお,感染管理についてクリニックにてすべて対応が難しい場合,表5-1のクリニックでの感染管理としてもよい.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者に広範囲の発疹,顔面など被覆ができない部位の発疹,あるいは全身症状がある場合, 医療従事者はN95マスクを使用する12
     なお, 米国, 英国やECDCは空気予防策を講じなかった医療従事者は曝露ありと判定しているが,フランス病院衛生協会(SF2H)では,空気感染は確認されておらず, エムポックスウイルスの感染経路は長時間にわたる密接な身体的接触と考え,標準予防策と不織布マスクを推奨している12. クリニックにおいては短時間の滞在であることから,疑い例や患者の症状に応じ,N95マスクとした.
  • 医療従事者は,個人防護具の装着前と外した後を含め,標準予防策に沿って手指衛生を行う1,3
  • 適切な手指衛生と個人防護具の使用に関し,平時から物品準備をしておくとともに,定期的に訓練を行う.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者には,可能な限り不織布マスクを適切に着用させ,水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する1,2
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者が滞在しうる環境は,通常の清掃を行い,その後,消毒(消毒用エタノールなど,エンベロープウイルスに対して強い消毒効果を発揮する薬剤)を行う1,4
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者の診察台は,不織布シーツやビニールシーツなどを使用し,診察後は廃棄,もしくは薬剤(前述)を使用した消毒を行う.
  • 廃棄物は感染性廃棄物として扱う1.病変部位の体液で汚染された医療廃棄物は,体液乾燥による塵埃感染防止の観点から,しっかりと密閉して廃棄することが望ましい.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者のリネン類などは,破棄が望ましいが,破棄が難しい場合は,上記個人防護具を付けて扱い,不用意に振り回したりせず,ビニール袋などに入れて密閉した状態で運搬し,洗濯機に入れ,通常の洗剤を用いて洗濯を行う.洗濯した後は再利用可能である.リネン類などを扱う際は,手指衛生(流水と石鹸による手洗い,または擦式アルコール手指消毒薬での消毒)を頻回に行う1,2
  • 感染の危険がある曝露があった場合,曝露後予防接種を考慮する(「6 ワクチン」参照).曝露後 4 日以内の接種が望ましいが,14 日以内であれば効果が期待できる.
  • 医療従事者の針刺し切創によるエムポックス罹患報告6-11もあることから,検体採取時の針刺しには特に注意し,針刺し切創の際は,すみやかに報告し,曝露後予防接種を考慮する.
     なお,医療施設,クリニックでのエムポックス疑い例,患者における感染管理の概要を表5-1にまとめた.
表5-1 エムポックス疑い例,エムポックス患者における感染管理
表5-1 エムポックス疑い例,エムポックス患者における感染管理

Ⅲ.自宅における対策

1.エムポックス疑い例自身やエムポックス患者自身の対策

  • 日常的に行う手洗い(食事前,排泄後,外出から帰宅した後など)のほか,自身の患部に触れた後,洗濯時に衣服を扱った後なども手洗いし,普段以上に手指衛生を励行する.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者がいる空間は,換気を十分行うようにする2,13
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者は,発疹の消失,痂疲が落屑し新しい皮膚が形成されるまでは,感染性のある期間に約2m以内で他の人と接触すること(食事など) はできるだけ避け,接する場合には不織布マスクを適切に着用する13
  • リネン類などの洗濯は可能な限り,エムポックス疑い例やエムポックス患者本人が行う.他の人が洗濯をする場合,医療機関やクリニックでのリネン類などの洗濯に準じて行う.
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者が接触したベッドやトイレなどの場所は,使い捨て手袋を着用して清掃し,その後,消毒薬(アルコール含有の消毒薬,または0.05%次亜塩素酸ナトリウム)で清拭する.清掃や消毒実施中,特に終了後は,手指衛生を適切に行う13,14
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者が使用した食器や調理器具は,石鹸や洗剤などで洗った後に再利用可能である13,14
  • エムポックス疑い例やエムポックス患者は,発疹の消失,痂疲が落屑し新しい皮膚が形成されるまでは,動物との接触を避ける.
  • 発熱, 口内炎, 咽頭痛,鼻づまり, 咳などの呼吸器症状がある場合は,旅行を避ける15

2.エムポックス疑い例やエムポックス患者の同居者やペットの対策

  • 積極的に手指衛生を行う.
  • 疑い例や感染者 とは,リネン類などの共有を避ける13,14
  • 自宅にペットがいる場合,患者が使用した後のリネン類などとペットとが接触しないように配慮する14

*エムポックス疑い例やエムポックス患者の感染経路,予防,対策に関しては,下記に掲載されている情報ツール16を参考として示す.
(MPOX GUIDE BOOK. https://ptokyo.org/eBook/mpox_guide_book/

参考文献

ワクチン

Ⅰ.エムポックスワクチンの概要

 痘そう(天然痘)ワクチンは,痘そうウイルスやモンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス:MPXV,以後エムポックスウイルスと表記)と同じオルソポックスウイルス属の一つであるワクチニアウイルスをワクチン株として使用したワクチンである.また,オルソポックスウイルス属のウイルス間の抗原交叉はよく知られており,痘そうワクチンによるエムポックスに対する発症予防効果が,天然痘根絶後の1980年代コンゴ民主共和国での研究で85%と推定され1,2003年に米国で発生したエムポックス流行事例の際の調査では,痘そうワクチン接種者ではエムポックスウイルスに対する防御免疫が誘導されていたことが示される2など,エムポックスに対する予防効果が報告されてきた.
 日本で開発された痘そうワクチン(一般名:乾燥細胞培養痘そうワクチン)は,天然痘の根絶期に使われたワクチン株であるリスター株を親株として作成されたLC16m8株由来の弱毒化生ワクチン(以下,LC16ワクチン)であり,天然痘に対する予防ワクチンとして1975年に承認(凍結乾燥製剤としては,1980年 8 月 に承認)されている.
 2022年7月6日に,LC16ワクチンの「効能または効果」に「エムポックスの予防」の適応を追加する製造販売承認の一部変更が申請された3.これに対し,LC16ワクチンのエムポックスに対する有効性(免疫原性)を確認した,米国での臨床試験および日本人での使用成績に関する公表文献4-7と,従来の痘そうワクチンで問題となっていた種痘後脳炎・脳症,皮膚合併症,心筋・心膜炎などを引き起こすリスクがきわめて低く,小児から成人まで幅広い年齢層に対して接種可能な高い安全性を有するワクチンであるとの評価に基づき,2022年8月にLC16ワクチンによるエムポックスの予防が薬事承認された.
 安全性の評価事例としては,1973~1974年にかけて,LC16ワクチンが小児約5万例に接種されたが,問題となる副反応は認められなかったことが報告されている8,9.このうち,特に詳細な臨床的観察が実施されたのは10,578例であり,1974年にLC16ワクチンを接種された9,538例について,善感率は9,538例中9,075例(95.2%),善感者のうち14日間以上の観察が可能であった8,544例中の発熱者(37.5℃以上,接種4~14日後)は663例(7.8%)であり,有熱期間は1日のみが発熱者の60.6%を占め,また発熱者の85%が2日以内であった.
 また,世界保健機関(WHO)は,2024年8月に発表されたエムポックスワクチンのポジションペーパーにおいて,免疫不全のない,妊娠女性以外の人に対するワクチンとしてLC16ワクチンを含むエムポックスワクチンの使用を推奨している10.また,2024年11月にはWHOの緊急使用リストに追加された11.このワクチン製剤は2~8℃の冷蔵保管で2年間保管することができ,室温(37℃以下)でも4週間保管することができる12など,コールドチェーンが整備されていない地域でも扱いが容易であり,1回で必要な接種を完了できることなどから,流行地域での活用が期待される.
 欧米では,LC16ワクチンと同じ第3世代でウイルス複製能のない痘そうワクチン(MVA-BNワクチン)がエムポックスに対して承認され,エムポックスに対する有効性が報告されている.2024年9月には、WHOはMVA-BNワクチンを事前承認した13

図6-1 痘そうワクチンの種類14
図6-1 痘そうワクチンの種類

Ⅱ.曝露前予防および曝露後予防

 一般に予防接種は,リスクとベネフィットを勘案した症例に応じた判断となるが,職業曝露高リスク者および感染の高リスクグループに対しての一次予防(曝露前)ワクチン接種(Primary preventive vaccination:PPV)と,エムポックス患者の接触者に対する曝露後ワクチン接種(Post-exposure Preventive Vaccination:PEPV)が推奨されている10

1.曝露前予防接種

 国内の審議会においては,曝露前予防として,エムポックス診療を行う可能性が高い医療従事者,エムポックスウイルスを取り扱う研究者,検査技師,公衆衛生対応チームが当面接種を考慮する対象とされている15.一方で,エムポックスの流行を防ぐ手段として,現時点でのリスクとベネフィットを考慮すると,エムポックスワクチンの一般集団への接種は必須ではなく,また世界的に推奨されていない.
 また,WHOはポジションペーパーにおいて,職業曝露高リスク者(エムポックス患者に接する可能性のある医療従事者,エムポックスウイルスを取り扱うラボ従事者,エムポックス診断を実施する臨床ラボ従事者,アウトブレイク対応チーム)および感染の高リスクグループ(ゲイ・バイセクシュアルその他MSMを自認する者,複数の性的パートナーがいる者),小児を含めたエムポックスの流行地域に居住する人々に対して曝露前接種を推奨している10
 国立感染症研究所は,2024年3月時点での評価において,当該ワクチンについて「感染者の接触者,高リスクグループのいずれについても,当面リスクベネフィットを評価しつつ,本人の希望に応じて,また国内での発生状況に応じて, 曝露前接種及び曝露後接種の機会提供が検討されるべきと考えられる」と,評価している16
 国立国際医療研究センターは,50名の健康な医療従事者を対象とした特定臨床研究の評価において,LC16ワクチン接種により4週間後には,エムポックスウイルスに対する十分な中和抗体が誘導されたが,時間経過とともに減少したこと,重篤な有害事象はなく,一般的な皮膚反応が最も多い有害事象であることが報告された.また,エムポックス発症に対するLC16ワクチンの予防効果を評価することなどを目的に,エムポックスへの罹患リスクが高い人に対し,臨床研究を通じてLC16ワクチンを用いた曝露前接種を,2023年6月から開始,2024年12月まで実施された17.当該研究では,研究評価期間に研究参加者からエムポックスの発症がなく,有効性は評価できなかったが,ART治療により安定的な免疫状態(過去の評価でCD4が250/µL以上)にあるHIV感染者352人が安全にLC16ワクチンの接種を受けることが可能であった.また,中和抗体検査による免疫原性の評価においても十分な免疫応答を誘導することが示された.

2.曝露後予防接種

 エムポックス患者の接触者〔患者の性的パートナー,同居人,適切な個人防護具を着用せずに患者の皮膚,粘膜,体液,呼吸器飛沫,体液に汚染された物質(寝具など)に触れた可能性のある人〕について,発症リスクと重症化予防を目的として,曝露後14日以内かつ発症前,理想的には曝露後4日以内の接種が推奨されている10
 国立国際医療研究センターでは,2022年6月より,エムポックス患者に対する積極的疫学調査により判明した接触者に対して,特定臨床研究において,エムポックスにおける曝露後予防接種としてのLC16ワクチンの有効性および安全性を検討する非盲検単群試験を開始し,2022年12月までに6名の接種対象者に曝露後予防接種を実施した19.結果,被接種者において,発熱,発疹,リンパ節腫脹などの有害事象はあったものの,接種に関連する重篤な有害事象はなかった.また,接種者全員がエムポックスを発症しなかったが,参加者数が少なく,予防効果の検討は十分にできなかったことが報告された.当該研究は, 2022年8月にLC16ワクチンにエムポックスの予防が適応追加されたことを受けて,実際の診療に合わせてより柔軟な対応が可能となるよう, 2023年1月29日に,新たに「サル痘予防における痘そうワクチンの有効性及び安全性を検討する観察研究」が開始され,研究が引き継がれた20.研究対象者はエムポックスの患者と接触した者およびエムポックスウイルスに曝露した者であり,発症した患者は対象外としている.対象者の希望および医学的な評価に基づき,エムポックス患者との接触から14日以内に痘そうワクチンを接種している.また,2023年10月から研究の多施設化により,各地域において研究が実施されている20
 LC16ワクチンの接種に当たっては,一般的なワクチン製剤とは異なり,製剤の規格が集団接種を前提として1バイアルから250人以上の接種が可能であること,二又針を用いた特殊な接種方法(多刺法)で接種を行う必要があることなどから,国立国際医療研究センター予防接種支援センターでは,医療従事者向けに接種方法に関する説明の動画及び接種手順ガイドをホームページで公開している21

参考文献

重要なお知らせ

「エムポックス 診療の手引き 第3.0版」ページを更新しました。

ページはこちら

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の診療指針」ページを公開しました。

ページはこちら

「カンジダ・アウリスの臨床・院内感染対策マニュアル」ページを公開しました。

ページはこちら

これまでの実績

2025年2月
家族内淋菌感染の可能性
2025年1月
数十年前の日本国内でのサル咬傷後のBウイルス感染症の可能性
2025年1月
ブルセラ症の検査室曝露後対応
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